• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

前回のブログで、柱状改良工法を用いた地盤改良工事費用の試算結果を示しました。

地盤改良工事費用は、地域によっては土地取得費用の数10%を占めると思われます。

地盤改良費用は、土地取得費用から差し引くべき費用なので、購入時に地盤改良の要否を把握していると、契約価格の交渉材料として使えます。(過去ブログより↓)

これまでにも、地盤改良の要否を見分ける方法をいくつか示してきました。

国土地理院提供の「地理院地図」というweb上での提供サービスが非常に便利で、中でも「土地条件図」は地形確認に役立つ地図情報です。

ところが、この土地条件図、日本全国を網羅していません。

今回は、土地条件図のない地域での地形確認と土質推定の方法について示したいと思います。

  1. 地形分類図と表層地質図の活用
  2. 古い地図の活用
  3. ボーリング調査結果検索サイトの活用
  4. まとめ

↓過去ブログ

1.地形分類図と表層地質図の活用

 先日、私がSNSでフォローさせて頂いている方からの依頼で、ブラインドで資料調査をさせて頂きました。

その際利用したのが、「地形分類図」と「表層地質図」です。

先ほど述べたように、土地条件図を利用すれば、地形分類の確認は容易ですが、土地条件図は全国を網羅していません。

このため、土地条件図がない地域では、国土交通省公開の「国土調査(土地分類調査・水調査)」の中の「5万分の1土地分類基本調査(都道府県調査)」結果を利用します。

【国土交通省GISホームページ,国土調査(土地分類調査・水調査)】https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/inspect.html

ここでは、5万分の1の地図が使われるので、土地条件図(2万5千分の1)ほど解像度は高くありませんが、地形や表層土質を把握するには十分な情報が得られます。

図-1 地形分類図の例
図-2 表層地質図の例

この資料の便利なところは、表層地質図(裏面)にボーリング柱状図が示されていることです。(図-3)

図-3 表層地質図(裏面)ボーリング柱状図の例

もちろん、対象地の近くにボーリング調査結果がないことも多々ありますが、同一地形でのボーリング柱状図があれば、土質や地盤の硬さを把握することが可能です。

なお、地形と土質の関係は、下記ブログの表-2に書いていますので参照してください。

長期的沈下の可能性が高い地形の場合、地盤改良が必要になると考えることができます。

人工的な地形(盛土や埋め立て地)も地盤改良が必要になることが多い地形です。

2.古い地図の活用

 埼玉大学教育学部 谷 謙二先生が公開されておられるサイト「今昔マップ」は、過去の地図を確認できる便利なサイトです。

【時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」 】
埼玉大学教育学部 谷 謙二(人文地理学研究室)
http://ktgis.net/kjmapw/

例えば、このサイトでは、図-4に示すように、1894~1915年の地図と現代の地図を並べてみることが可能です。

図-4 今昔マップの例(時系列地形図閲覧サイト「今昔マップon the web」より抜粋)

左の古い地図では、“布佐”という文字の下に細長い水域が記入されていますが、右の現代の地図にはありません。

水域が埋め立てられたのでしょう。

2011年の東日本大震災では、この地域で大規模な液状化被害が発生しました。

古い地図は、災害のリスクを考える上でも重要な情報を提供してくれます。

3.ボーリング調査結果検索サイトの活用

 近年、ボーリング柱状図の公開が進んでいます。

首都圏の1都3県では、県単位で実施した地盤調査結果が公開されています。

また、国土交通省でも同様です。

その他にも公開している自治体は多いと思います。

“〇〇県”、“ボーリング柱状図”等の語句で検索してみてください。


東京都
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/tech/start/03-jyouhou/geo-web/00-index.html

千葉県(くらし・環境マップの中)
https://map.pref.chiba.lg.jp/pref-chiba/Portal

埼玉県
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0501/gis/atlaseco.html

神奈川県
http://www.kanagawa-boring.jp/boring/index.htm

国土交通省等
https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_fr1_000013.html


 地形を確認した後、対象地の近くで同じ地形に属するボーリング柱状図を探し当てることができれば、対象地での地盤情報の推測精度は飛躍的に向上します。

粘土やシルト等の粘性土は地盤改良の必要性が高い土質です。

ここまで調べれば、対象地の地盤状況をほぼ把握できたと言えるでしょう。

ただし、ボーリング柱状図を見る場合は、孔口標高には注意が必要です。

現在の標高と異なる場合は、ボーリング調査の後に盛土や切土がされた可能性があるので、調査結果の見方には注意が必要です。

対象地の標高は、2万5千分の1の地形図から確認可能です。

4.まとめ

 以上、今回は、表層地質図や地形分類図を用いた地形評価とボーリングデータの検索方法について紹介させて頂きました。

このように、地盤調査前に、地盤の状態を知ることは、現在では比較的容易です。

また、地形を把握したうえで、現地の状況を見るとリスクの想定精度が高まります。

スウェーデン式サウンディング試験は、このような事前調査の結果を確認するために実施すると言っても過言ではありません。

土地購入にあたっては、利便性を検討される前に、ここで取り上げた「地形」の把握と「土質」の推定を行うことをお勧めします。

地盤改良が必要となる地盤であれば、地盤改良費用の売り主負担について交渉してみましょう。

工事費用については、過去のブログに、公共工事の工事単価をベースにした試算結果を示しているので、そちらを参考にしてください。


神村真



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