• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

土地購入時に、その場所にどんなリスクがあるかを考えることは、意外に難しいものですが、購入者に知識がなければ、高いリスクがある土地を購入することになります。

これを避けるために、土地を購入するまでに、自分が「許容できないリスク」が存在しないことを確認する必要があります。

前回は、主に災害時に発生する「許容できないリスク」の見つけ方について触れました。

今回は、土地が持つリスクの確認手順について考えていきたいと思います。

1. 災害によるリスクと不同沈下リスク

土地が持つリスクは大きく分けると、災害リスクと住宅が自重によって傾いてしまう不同沈下リスクがあります。

それ以外にも、隣人、振動・騒音等、様々なリスクがありますが、ここでは、災害と不同沈下に限定したお話をします。

前者は、自然災害によって人命が失われる、住宅が破損したことで個人の資産形成に悪影響が及ぶ等の深刻なリスクのことです。

後者は、住宅建設で実施する地盤調査が比較的簡易なものであることから起こる問題で、自宅の引き渡し後に、住宅がその自重で傾くリスクです。

前者は、保険や公的支援制度によって、多くの部分をカバーすることができますが、保険制度上、残されるリスクがあります。

例えば、洪水や液状化被害を受けた後の自宅の片づけは、非常に大変です。
まず、自宅が住める状態にない場合は、避難所生活をつづけるか、仮住まいに引っ越す必要があります。

避難住宅での長期にわたる生活はプライバシーが確保されないとか、入浴・トイレの面に不自由があるなど、非常に大変です。

それでも日常生活は行う必要があるので、日常生活を続けながら片づけを行うことになります。

片づけは業者に委託できればよいのですが、被害が大きい災害では、対応できる業者を探すことが困難になります。

また、大きな災害が発生すると、遠方から質の悪い業者がやってくるので、災害とは別のトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

一方、不同沈下リスクは、技術管理不足によって生じる現象です。

保険制度や地盤保証制度によって、住宅の傾きを修正する工事費用だけではなく、付帯する費用(内装の修正や工事中の仮住まい費用)もカバーできているものがあります。

家を建てる際に、工務店がどのような保険や保証に加入していて、どのようなサービスを受けることができるのかをよく確認しておくことをお勧めします。

【参考記事】

2. リスクと地形

さて、ここで挙げた二つのリスクですが、いずれも地形と密接な関係があります。

例えば、河川の洪水で大きな被害が出る地形は、標高の低い「低地」です。

また、豪雨時や水害時に土砂崩れが発生する地形は「崖地」です。

「土石流」で大きな被害が出る地形は「扇状地」です。

住宅の不同沈下が問題になるのは、「低地」や「盛土地」です。

このように、地形に着目すると、どのようなリスクがあるかを把握することができます。

を大きく受ける地形はこれは、災害の代表である「水害」を引き起こす川は、人々が住んでいる地域の周りには、川が作った地形が多いためです。

なお、不同沈下が低地で発生しやすいのは、低地に軟弱な地盤が厚く堆積しているからです。

このように、地形は、災害リスクだけではなく、堆積している地層とも大きな関係があります。

図-1に、地形の俯瞰図を示します。

図-1 地形の分類

「山地」や「台地・段丘」は、地球の活動で地面が隆起したり、海水面が低下したり、火山が噴火したりすることで生み出されます。

「台地」は、火山の爆発によって生み出された地形です。

関東地方の「ローム台地」や九州地方の「シラス台地」が有名です。

関東のローム台地は、「関東ローム層」と呼ばれる火山灰が堆積してできた土が厚く堆積している地形です。一方、九州のシラス台地は、火砕流堆積物に由来するものです。

山地や台地は、住宅地としては優秀な地形ですが、注意も必要です。

山地や台地の端部では、傾斜が急なので盛土と切土が共存することが多く、この土質の違いによる不同沈下が問題になる場合があります。

さて、水は、高いところ(山地・台地)から低いところ(低地)に向かいます。

主な水の流れは川となり、山地や台地を削りとって、「谷」を作ります。

特に、地面の隆起や海水面の低下が同時に発生した時期には、河川勾配が急になるので、谷の形成が進みます。

その後、気候変動などの影響で海水面が上昇し、河川勾配が緩やかになると、削り取られた谷に土砂が堆積します。

この時、作られた地形が「谷底平野」です(谷底低地と呼ぶこともあります)。

図-1のオレンジ色の台地に挟まれた低地が谷底平野です。

谷底平野の形成時期には、河川勾配が緩やかなので、軟弱な粘性土が厚く堆積していることが多く、住宅にとっては、不同沈下リスクの高い地形と言えます。

再び、隆起や海水面の低下が起こると、谷に堆積した土砂が川に削られ、また谷が生まれます。

このようなことを繰り返し、河川の両側に階段状の地形が作られます。

これが「段丘」です。

階段状の最も標高の高い面が最も古い地層で、宅地としては最も安定した地形の一つです。

しかし、段丘の端部は崖地なので、豪雨や地震時には「土砂崩れ」の可能性が高く、注意が必要です。

川の上流に目を戻しましょう。

河川に上流部では川幅が狭いため、流木などによって流れが阻害され、自然のダムが形成されることがあります。

このダムによって、多くの土砂や巨石がせき止められるのですが、豪雨時に、ダムが決壊し、せき止められていた大量の巨石や土砂が、一気に下流に流れます。

これが「土石流」とか「鉄砲水」とか呼ばれる現象です。

土石流によって運ばれた巨石や土砂は、河川勾配が急激に小さくなる山地と低地の境界部に堆積します。

これが繰り返されてできた地形が「扇状地」です。

扇状地は、巨石やそれが砕けた石、山地の土砂からなる地形で、比較的排水性が高いことが多く、緩やかな斜面を形成しています。

このため、かつては桑畑や果樹園として利用されていましたが、砂防ダムの整備などが進んだこともあり、宅地として利用されるようになっていきました。

しかし、地形から見えれば土石流に遭うリスクが高い地形です。

次に、川の中流域を見ましょう。

河川の中流域では、河川の氾濫(洪水)によって大きな平野が作られます。

これが、「氾濫平野」です。

日本では毎年6月の梅雨時期と9から10月にかけての台風時期に、記録的な豪雨が発生します。

今のようにダムや堤防が整備されていない河川は、規模の大小はあるものの、毎年のように氾濫していました。

氾濫を繰り返すと、河川の両側に砂や礫などの、やや重い粒子の土が堆積する場所が形成されます。

これが「自然堤防」です。

自然堤防は、周囲よりも標高が高く、昔から集落が形成されることが多かった地形です。

水田に近いわりに、標高が高く、洪水の影響を受けることが少なかったのでしょう。

自然堤防の外側には湿地が形成されていきます。

これが「後背湿地」です。

後背湿地には、葦のような水際植物が繁茂します。

この植物は分解されにくく、「腐植土」という植物繊維からなる間隙の極めて大きな特殊な土を作り出します。

腐植土は、建物荷重によって大きな沈下をもたらします。また、盛土荷重など、大きな荷重が作用すると何年も沈下が続く場合があります。

同様の状態になりやすい地形が、「旧河道」です。

この地形は、もとは「三日月湖」として存在していたのですが、次第に土砂が堆積して埋まってしまったか、水田利用されるようになったことで陸地となった地形です。

最後に、下流域に目を向けましょう。

それまで川の底をころころと転がってきた石ころは、河口付近の下流域まで来ると小さな砂粒になっています。

下流域では、河川勾配が小さくなるので、川の土砂を運搬する力が低下します。

このため、河口付近には、砂がどんどん堆積していきます。この堆積した砂の間を糸のように川が枝分かれしていきます。このような地形を「三角州」と呼びます。

また、海岸部では三角州に堆積した砂質土が風によって吹き上げられたことで「砂丘」や「砂堆」が形成されていきます。海流の力で鳥のくちばしのような「砂嘴(さし)」ができることもあります。

これらの河口付近の地形は、砂によって作られているので、地下水位以深では地震時に液状化現象が発生する可能性があります。標高が比較的低い地域では要注意です。

なお、図中には示していませんが、河口付近や海岸線近くでは、干拓や埋立てによって人工的に陸地が作られることがあります。

これらの地形でも、土質によっては、液状化現象が発生する危険性が高い場合があるので注意が必要です。

3. 地形によるリスクの確認手順

さて、地形とリスクの関係をご理解いただけたでしょうか?

地形の確認に役立つのは、国土地理院の地理院地図です。過去の記事にも、これらのツールを使った地形の確認方法を示しているので、参考にして下さい。

【参考記事】

今回は、地形とリスクの関係から、地形によってリスクを抽出するフロー図を作成してみました(図-2)。

図-2 土地が持つリスクの確認手順

図-1で示した地形の名称を思い出しながら、図-2を見ていきましょう。

まずは、「低地」か「台地・段丘」か。

低地は川の力でできた地形、台地・段丘の多くは、火山の活動や地盤の隆起で出来上がった地形です。

川の通り道である低地には、水害の危険が付きまといます。また、低地には軟弱な粘性土が堆積しているので、不同沈下の可能性も高まります。

このような低地の中に「微高地」と呼ばれる場所があります。「自然堤防」がそれにあたります。古くから集落が形成されることが多かった地形ではありますが、自然堤防を越えて、土砂が何度も運搬されたことで低地が形成されたことを考えると、自然堤防もやはり水の通り道であることに変わりありません。

このような水害リスクの高い地域では住み方について十分な検討を行う必要があります。

【参考記事】

一方、台地・段丘は、低地よりも標高が高く、水害の可能性は低いものです。地盤も比較的良好で、木造住宅を支えるには十分な強度を持っている場合が多いものです。

ただし、前述のように、台地・段丘の「端っこ」には注意が必要です。

この場所は見晴らしがよいので、人気があると思いますが、非常に不安定な地形でもあるので、できれば避けたい場所です。

また、台地・段丘や山地の中にも、危険な土地が含まれる場合があります。これらの地形に刻まれた谷を盛土した場所です。

大規模盛土造成地と呼ばれますが、この地形は、地震時に問題が顕在化する場合があるので要注意です。

【参考記事】

「谷」と「平野」との境界部である扇状地も、かつての土石流によって作り出された地形なので、土石流の危険性があることを覚えておく必要があります。

なお、山地の中には小さな谷が無数に存在します。このような小さな谷と低地との境界部は豪雨時に「土石流」、地震時に「土砂崩れ」が発生しやすい場所です。このような地域で土地を探す場合、周辺に災害の痕跡を示す神社や祠がないか、よく調べることをお勧めします。

また、人工的に作られた「埋立地」は、使われた土が主に砂の場合、地震時に液状化が発生する可能性があります。

このように、地形を把握することで、災害や不同沈下のリスクをあぶりだすことができます。

4. まとめ

地形とリスクの関係をざっと整理してきましたが、如何でしたでしょうか?

日本は人が住める面積が小さい割に人口が多く、災害リスクの低い地域を見つけることが難しいという問題を抱えています。

このため、土地を探す場合は、「許容できるリスク」と「許容するために対応すべきこと」を明確にし、自分の能力で対応できないことを「許容」しないように注意しながら土地を探す必要があります。

特に、この先、人口減少の影響が目に見えてくるようになります。

地方では鉄道が廃線になることもあります。

様々な都市でコンパクトシティー構想についての計画が具体的に始まっています。

今ある都市の形は、10年後には様変わりしているかもしれません。

新たに土地を求めるのなら、このような近未来の計画にも目を向ける必要がるでしょう。

以上
神村 真



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA