• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

日本は地震が多く、自然災害大国ともいわれています。

災害に強い土地を選ぶことができれば、安心して日々を過ごすことができます。

ところで、災害リスクは同じ地域では誰にとっても同じものと思っていませんか?

実はそうではないのです。

災害リスクは、一人一人、各家庭によって様々です。

今回は、地震によって発生するリスクを想定するために、被害の内容、対策の方法などについて整理したいと思います。

  1. 注意したい土地
  2. 受容できるリスクと受容できないリスク
  3. 対策方法
  4. まとめ

1.注意したい土地

大規模な地震時には、住宅が倒壊することはよく知られています。

しかし、もっと注意すべきことは土地そのものが崩壊することです。

土地の崩壊によって、本来地震では倒壊することのなかった住宅が倒壊することもあり得ます。

この場合、宅地の復旧を行った後に住宅を復旧するので、復旧に要する費用が住宅だけを復旧する場合よりも大きくなります。

特に注意したい土地については以下の通りです。

谷地形を埋め立てた盛土造成地

過去の大規模地震では、谷を埋め立てた盛土造成地の崩壊が原因で建物が被災したケースが 多数存在します。
仙台市は、東日本大震災後、盛土の位置やその厚さに関する情報を簡単に検索できるようにしています。
(仙台市宅地造成履歴等情報マップhttp://www.city.sendai.jp/kurashi/anzen/saigaitaisaku/kanren/index.html)

台地の端の見晴らしのよい土地

台地の端部の見晴らしのよい場所も、注意したい場所です。
このような地形では、斜面が崩壊する危険性があります。
斜面が崩壊した時、もしも、斜面の下に人がいたなら、人命が奪われる可能性があります。

沿岸部の標高が低い地域や埋立地

沿岸部の微高地となる砂洲などのうち、標高が低い地域や埋立地では、液状化による被害が発生する可能性があります。
液状化が発生すると、建物に被害がなくても、下水などライフラインの被害が大きく長期間に渡って生活に影響がでることがあります。


利便性や周辺環境も大事ですが、上述したような被害の可能性も考えて土地探し、家探しをすべきです。

2.受容できないリスクと受容できるリスク

土地を探す場合、災害によって発生する損害(リスク)を最小化し、受け入れ可能な(受容できる)ものにできるかどうかを確認する必要があります。

受容できるかどうかは、各人の考え方や経済力によって大きく変化します。

絶対回避すべきリスク

人命が失われるリスクは、誰にとっても受容できないリスクです。
回避するためのあらゆる対策を講じるべきでしょう。
このリスクを回避するためには、この土地で何が起こる可能性があるか、住宅に求められる性能は何かを具体的に理解しておく必要があります。
土地によっては地震の揺れが増幅されることがあり、十分な強度を持った住宅でなければ、最悪倒壊し、人命を奪います。
人命が失われることは、絶対回避すべきリスクです。
人命とは、自分の命だけではありません。
時には他人の命を奪ってしまうこともあるのです。

避難所での暮らし

避難所での暮らしは、受容の可否が人によって大きく変わるでしょう。
本震の後、余震が頻発しますが、その回数は2~3日後には減少してきます。
この時、住宅に大きな被害がなければ自宅に戻ることができますが、自宅が何らかの被害を受けている場合、危険度判定が出るまで自宅には入らない方が良いでしょう。
そうなると、避難所生活が長期化することになります。
このため、在宅で介護することが想定される方、ペットを飼っておられる方などは、避難所での長期生活は、受容できないリスクと言えるでしょう。


ご自身の経済力や状況に応じて、リスクを評価することが重要です。

3.地震対策の方法

地震対策の基本は、リスクを受容可能なレベルに変えることです。

ここで重要なことは、何が受容できるレベルか?ということです。

例えば、先に述べたような、谷地形を埋め立てた土地で自分の土地が地震によって大きな被害が出る可能性があっても、実際に被害が生じた時にその土地と住宅を放棄できたり、代替地への移転と住宅再建が行えたりする経済力のある方は、この土地の持つリスクを受容できます。

このような方は、地震時に住宅や擁壁が倒壊することで人命を失わないようにさえしておけば、リスク対策は十分だと言えます。

液状化に対しても同様です。

液状化の発生によって住宅が大きく傾き、インフラも甚大な被害を受けます。

傾いた住宅での生活は健康に悪影響を及ぼすことが分かっていますので、被災後は自宅以外の住居を新たに確保しつつ、自宅の傾斜修復工事を行う必要があります。

この傾斜修復工事は、安いものでも数百万円を要しますが、国や自治体の被災者生活再建支援制度や地震保険を活用すれば、自己負担額の軽減は可能です。

このような経済的な損失を受容可能であれば、液状化被害は受容可能と判断できるかもしれません。

4.まとめ

「敵を知り、己を知れば、百戦あやうからず」

地震時に、その土地ではどのような被害が発生するでしょうか?

そして、その被害に対して、自分は何ができるでしょうか?

何が起こるかもわからず、自分に何ができるかも知らずに、その土地に住み続けること。

それは運を天に任せることと同じです。

ある方に、ここでお話したような内容についてお話をしたところ、

「そんなことは、プロが配慮してくれているはず」

「そんなことまで考えていられない」

というお返事を頂きました。

さて、不動産業や住宅供給者の方々は、この言葉にどう応えられるでしょうか?

残念ながら、災害リスクの評価は、他人任せにはではできません。

本文でもお話したように、リスクの受容範囲には個人差があるからです。

このため、リスク対策については、消費者とプロが一緒になって考える仕組みが必要です。

私は、このブログを通して、消費者とプロが会話するための共通知識を提供したいと考えています。


神村真



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