• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

我が国は住宅建設に適した平地が少ないので、山や丘を削って谷を埋めたり、水田跡地に土を盛ったりして宅地が作られています。

このような盛土造成地は、災害時のみならず色々な問題を抱えています。

今日は、そんな盛土造成地のお話です。

  1. 地震時に危険な大規模盛土造成地
  2. 盛土造成地の問題
  3. 注意したい盛土造成地
  4. まとめ

1.地震時に危険な大規模造成盛土

国土交通省は、大規模盛土造成地について、以下のように指摘しています。

”東日本大震災で滑動崩落の被害を受けた宅地の多くは1970年代以前に造成されており、宅地造成等規制法等の改正により技術基準を強化した2006年以降に造成された宅地においては被害が発生していない~以下略~”

出典:国土交通省 大規模盛土造成地の滑動崩落対策について

また、2020年3月30日まで、大規模盛土造成地の位置を示した地図の作成が続けられ、現在は全ての自治体で、マップが公表されています。

しかし、危険な盛土の特定にまでは至っていません。

”大規模盛土造成地はすべてが直ちに危険のあるものではありませんが、すべての47都道府県の1003 市区町村において、51,306 カ所(面積約10 万ha)が存在することが明らかになりました。 ”

出典:国土交通省 報道発表資料 「全国に51,306 カ所の大規模盛土造成地の存在が明らかに! 」

今後は、各盛土の危険性を特定し、対策工事を順次始めていくことになりますが、”47都道府県の1003市区町村において、51,306 カ所(面積約10 万ha)”の 盛土の危険性評価だけでも相当な作業です 。

具体的な対策の開始までには、まだ時間を要しそうです。

なお、この大規模盛土造成地は、不動産売買時に、説明が必要な事項には含まれていません。


参考:一般社団法人兵庫県宅地建物取引業協会(HP) 公開
大規模盛土造成地マップ公表に伴う重要事項説明等の取扱いについて 兵庫県からの通知(PDF)


多くの災害ハザードエリアは、ハザードマップの形で公開されていますが、現段階では、いずれも重要事項説明が必要とされていません。

このため、ハザードエリア内で新たな住宅の建設が続いています。

2.盛土造成地の課題

問題のある造成地は、大規模盛土造成地だけではありません。

水田を埋め立てた小規模な盛土地にも問題があります。

長期にわたる沈下

 水田は、水はけの悪い粘性土が堆積した場所に作られていることはイメージしやすいと思いますが、田にも種類があることをご存じでしょうか?

戦前の地図では、水田は、乾田、湿田、沼田の三つに分類されていました。

”乾田は冬場にぬかるまない田、沼田は冬場でもぬかるむ田、水田はその中間です。”

出典:国土地理院広報第610号,国土地理院 ことばのミニ辞典~近代測量150年特別編➂「地図記号」~

乾田は、おそらく地表面付近の粘性土が比較的薄く、直下に砂層が堆積しているので、水を抜くと比較的早く地表面が乾燥し硬くなるのでしょう。

一方、湿田や沼田は地表面の粘性土が厚く、常に湿地化していたのでしょう。

いずれの水田にしても、盛土をすると沈下が発生しますが、問題になるのは、湿田や沼田のような常にぬかるんでいたような水田です。

湿地は、湿地性の植物が繁茂します。

これらの植物が完全に分解されずに堆積を続けることで腐植土が作られます。

この腐植土は、圧縮性が非常に高く、盛土の自重で大きな沈下が発生します。

図-1 腐植土
地盤補強をしたことで生じる問題

普通の粘土地盤では、1m程度の盛土であれば長くても3年程度で沈下が収束していきますが、腐植土が堆積しているような場所では、主な沈下が収束した後も、年間数mm程度のわずかな沈下が長期間に渡って継続する場合があります。

このような造成地では、住宅の沈下対策のための地盤補強を行うので、住宅は沈下せず、周辺地盤が沈下することになります。

このため、基礎と地盤間に隙間ができたり、外構にひび割れや不同沈下などの現象が現れたりします。

地盤補強が不十分な場合、周辺地盤の沈下によって杭状補強体が地中に引きずりこまれ、住宅自体が不同沈下してしまうこともあります。

図-2 杭の抜け上がり
地上高さ2m以下の擁壁には気をつけろ

このような造成地を囲むために建設された擁壁は、さらに、問題を引き起こします。

地上高さ1m程度の盛土の場合、プレキャスト擁壁が用いられることが一般的です。

地上高さが2mを超える擁壁は確認申請が必要ですが、地上高さ2m以下の擁壁は確認申請が不要です。

つまり、造成計画を立案した人まかせの擁壁が出来上がります。

プレキャスト擁壁の場合、必要な地盤の強さが決められているので、地表面をわずかに地盤改良して支持力を確保し、擁壁が建設されることもあります。

軟弱な地盤上に盛土しているので、この程度の地盤補強では、擁壁も盛土と一緒に沈下してしまいます。

このような擁壁は地震時にも大きく動いてしまうことも考えられます。

3.注意したい盛土造成地

 残念ながら、宅地として満足な性能ではない造成地は多数存在します。

新規に住宅を建てる方々だけではなく、既存住宅の購入を考えている方も、盛土造成地には十分に注意してください。

建設から時間が経過すれば沈下は落ち着きますが、先に述べたように、腐植土が関与すると沈下が収束するまでには長い時間を要することがあります。

盛土造成地内の宅地や住宅の購入を考える時にチェックしておきたいポイントを、ざっと列挙してみました。

  • 盛土造成地の周りは水田や畑ではないですか?
  • 造成地の周囲を囲む擁壁や擁壁上のフェンスは水平でしょうか?
  • 道路の縁石や擁壁はまっすぐ並んでいますか?
  • 擁壁の上にブロックが積まれていて、地盤高さが擁壁の高さを超えていませんか?
  • 擁壁と擁壁の間の目地に開きはありませんか?
  • 間知石の目地にひび割れが入っていませんか?
  • 擁壁に水抜き孔はありますか?
  • 擁壁の材料は玉石ではないですか?
  • 擁壁の上にさらに擁壁が作られていませんか?
  • 住宅の外構(カーポートや外構と基礎の接続部分等)にひび割れが入っていませんか?
  • 造成地内の電柱は傾斜していませんか?
  • 周囲の住宅の外壁や基礎にひび割れが見られませんか?
図-3 危険な擁壁

4.まとめ

 残念ながら我が国の現行制度では、安心できる自宅建設用の土地や戸建て住宅は、容易には手に入りません。

自宅建設のための土地や戸建て住宅を入手する場合は、土地にはどんなリスクがあるのかを知っておく必要があります。

自分ですべてを調べる必要はありませんが、十分な知識を持った不動産事業者を探すことは、必要不可欠でしょう。


神村真



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA