今日は、久しぶりに、「ヤバいSWS試験結果」が手に入ったので、あなたと共有したいと思います。
こういう見事なまでに危険な地盤が現れる場所にも家は建っています。
地盤調査にお金を掛けないのなら、地形をしっかり見ましょう。
今日は、そんなお話です。
図⁻1は、同じ現場で行ったSWS試験とボーリング調査結果です。縦軸が深度で横軸は、N値(ボーリング調査結果)または換算N値(SWS試験結果)です。白丸のプロットがボーリング調査結果、実線がSWS試験結果です。
それぞれ、全然違いますよね…
SWS試験結果ではGL-5m付近から換算N値が3となり、GL-8m以深は換算N値が3を超えています。一方、ボーリング調査(標準貫入試験)で得られるN値は、地表面付近こそ、N値が1で、SWS試験と類似するものの、GL-2mから9mまで、N値はゼロで、GL-9m 以深でようやくN=1となっています。
このように、SWS試験は、実際の地盤強度を過大評価してしまうことがあります。
なぜ、こんなことになるかは、以下のブログ記事で解説していますので、そちらを参考にしてください。
住宅地盤ではWswが1kNあると、軟弱だけれども、「少し安心できる地盤」と考えます。また、Nswが計測されていると、「悪くない地盤(沈下はしない)」と考える傾向があります。
ですから、図⁻1に示したSWS試験結果を見ると、「Wsw=1kNの地層で、柱状改良体の周面抵抗力を考慮して建物を支える」ことを考える人が現れます。しかし、実際の地盤は、N=0~1の超軟弱な地盤で、周面抵抗力は全く期待できません。
N値がゼロの地盤は、ご想像のように、激しく沈下します。
建物の自重で地盤が沈下を始めると、杭も地盤と一緒に沈下し始めます。周囲の地盤の動きに引きずられるためです。こんな時、杭の先端地盤が、N値ゼロの「支持能力のない地盤」の場合、地盤補強していても、家は沈下することになります(図⁻2のような状態です)。
ちなみに、こういう場所に盛土をすると、当然、大きな沈下が発生します。建物荷重を、杭でしっかりした地盤で支えるようにしても、地盤の沈下は抑えられます。家は沈下しないけど、外構が沈下するのですから、外構に色々な問題が現れます。
写真⁻1は、建物は杭でしっかり支持されているので沈下しないのですが、外構が沈下したことで、玄関ポーチのステップを踏み台で追加している事例です。図⁻1に示したようなSWS試験結果が現れる場所では、こういうことが起こります。
こういう場所での宅地の不具合事例を動画で紹介していますので、こちらもお暇な時にご覧ください。
図-3に、「古い地図」と今の地形分類図を並べて示します。図-1に示した調査結果が得られた周辺の地図です。
古い地図では、水田を三種類に分類しています。
私は以前、千葉県野田市に住んでいた時に、沼田での田植えでは、「肩まで水に浸かった」という話を聞いたことがありますが、冬でも水が抜けない田んぼは、お米を作らなければただの「沼」ですね。今の地形分類図からは、このあたりが後背湿地であることが分かります。
今では、このような場所に盛土をして人が住んでいますし、宅地として販売もされています。
しかし、かつては「沼田」だった場所です。
こういう場所に盛土すれば、大きな沈下が発生することは、わりと想像しやすいと思いますが、如何でしょうか?
このような地形に位置していて、さらに、SWS試験結果が図⁻1のようなデータの場合、沈下リスクが極めて高い地盤が堆積していると考えて間違いありません。
地形を知らずにSWS試験結果を眺めていると、試験結果の異常に気付くことはありませんが、地形を見ていれば、誤った判断を下す可能性は相当下がります。
いつもお話している、「やばいSWS試験結果」を共有させて頂きましたが、如何でしたでしょうか?
「A社に、地盤補強の見積もりを頼んだら非常に高額だったけど、B社は随分安かった」こういう結果になる現場は、「ちょっとオカシイ」と考え、SWS試験結果と地形の関係をもう一度確認してください。A社は地盤の沈下リスクを適切に判断し、B社は見過ごしているかもしれません。
このように、SWS試験は、誤差の多い試験ですが、その中に小さな真実が隠れています。地形は、そんな小さな真実を増幅してくれます。
SWS試験結果を見る時は、試験結果を地形と組み合わせて見れば、「危険な地盤であること」に気づくこともできます。調査方法の特性を理解して、正しく使うことが大切ですね。
神村真