• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

2022年3月の福島県沖地震では、仙台市内の盛土地でも宅地被害が出ていると報道されています(日建コンストラクション8月号)。記事を読まれた方も多いと思いますが、その記事を読んでいて、「ああ、宅地って、高い買い物のわりに、品質に関する規定があいまいで、適当だなあ」とつくづく思いました。そういうことが意外に知られていないようなので、ポンコツ宅地のことについて、解説したいと思います。

  1. 壊れる宅地・沈む家
  2. ポンコツ地盤補強
  3. ポンコツ宅地を選んでしまったら
  4. まとめ

1. 壊れる宅地・沈む家

日経コンストラクション8月号(2022年)に震度5強で壊れたという宅地の写真が出ています。日経Xtechにも同じ写真が掲載されているのでリンクを貼っておきます。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ncr/18/00158/081200009/

Google Mapでこの場所を調べると、下側に玉石積み擁壁(練積み(コンクリートで固めてある)のようです)があって、その上に高いところで7から8段のブロックが積み上げられていることを確認できます。ブロックは「塀」ではなく、土留めとして利用されています。見るからに怪しい宅地です。

今年の5月に「宅地造成及び特定盛土等規制法」が成立したので、今後は、こういう怪しい宅地はなくなっていくのかもしれません。この法律の骨になる技術基準は現在策定中で、9月には何らかの答えが出るようですので、法律の詳細については、改めてお伝えしたいと思います。

https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_tobou_tk_000076.html

なお、盛土が崩壊して大変な被害が発生するということは深刻な問題ではありますが、私のところに届く相談事の多くは、盛土による沈下で家が傾くというものです。こちらの盛土については、今のところ何の規制もないようですが、今後どうなるのでしょう。動向が気になるところです。

このように、宅地の中には、「どうしようもないもの」が数多くあります。こういう土地は、将来、必ず大きな課題となります(実際、今、問題になっています)。それを解決するために税金を使わざるを得なくなります。劣悪な宅地を売りさばいて利益を得た者がいるにもかかわらずです。その税金を支払うのは、私たちや、私たちの子供たちです。私や彼らが何をしたというのでしょうか?

多くのポンコツ宅地は、法律を犯しているわけではありません。しかし、「安全な宅地を後世に残そう」という意図は微塵もありません。土地の売買は商売です。相場より高額になってしまうような宅地は作っても売れませんから、必要最小限度の合法性を確保した土地が市場で売買されます。そのポンコツ宅地を有難く買っているのは、私たちです

私たちの無知が、ポンコツ宅地を流通させ、そのツケを私たちの子供が払うことになるのです。

2.ポンコツ地盤補強

宅地もポンコツですが、地盤補強もポンコツな場合があります

東日本大震災の時、基礎外周部の地盤にクラックが入っている。家が滑動したのでは?という相談をいくつかいただきました。地盤改良されている場合は、掘削して改良体と基礎の位置関係等を調べました。私が調べた範囲では、滑動の事実は確認できませんでした。

当時、私は戸建て住宅に住んでいましたが、私の自宅にも基礎外周地盤にクラックが入っていました。家の者の話では、家は横滑りするというよりも、振り子のように揺れていたそうです。揺れるたびに、地盤の割れ目が開いたり閉じたりしていたそうです。

家の重心は、案外高いところにあるので、滑動というよりも振り子のように揺れるんでしょう。基礎の設計でも、地震力によって建物が振り子のように動くと想定して、地震時の基礎底面接地圧を計算することが決められています。家が振り子のように揺れると、基礎下から地盤に向かって、図1のような力が働きます。この図から、地震力が働くときに地盤に働く力は、地震ではない時よりも大きくなることが想像できると思います。

【参考文献】例えば、日本建築学会:小規模建築物基礎設計指針, pp.112-118, 2008.

図1 振り子のように揺れる場合の基礎底面に働く力

ところで、住宅の多くは構造計算していません。つまり、図1に示したような「地盤に伝わる力の大きさ」さえも分からないのです。

地盤改良業者が地盤改良の設計をするのですが、彼らは、二階建ての木造住宅の重さは「大体これくらい」という目安の値を使って設計をします。杭の配置によっては基礎が壊れる可能性があるのですが、地盤改良業者さんには、基礎の安全性を計算することができないので、安全余裕度をたっぷりと考慮して杭の配置計画を立てます。非常に不経済ではありますが、重ささえ分からない建物の地盤改良を行うのであれば、これくらいの余裕を持たさないと地震時に家が傾いてしまうかもしれません。

そんな状態にもかかわらず、地盤改良工事の「経済性」を追求しようとする消費者がいます。そのことを忖度する工務店さんもいます。

経済性を追求することは悪いことではありません。しかし、経済性を追求するなら、安全率がどれだけ下がったのか?下がっても最低限の安全率は確保されているのか?それくらいは確認してください。そして、確認できないのなら、「これは危険だ」と思える感性を維持してください。

なお、経済性を追求するなら、建物から地盤にどのような力が伝わるのか、杭をどのような間隔で打つのが経済的かということを構造計算によって確認していく必要があります。計算手法の概要については、以下の記事に掲載したので参考にしてください。

3.ポンコツ宅地を選んでしまったら

「私の土地大丈夫ですか?」

と質問を頂くことがあります。お金を頂かなくても良い範囲で、ざっと調べてみて、こんなことに気をつけると良いですよ。という返事を送るのですが、その内容で、とても不安を感じさせてしまうことがあります。

あなたもそうかもしれませんが、「この宅地はポンコツかもしれない」と疑いながら土地を探す人は、今のところ少数派でしょう。でも、この記事を読んだ人は、買ってはいけない土地があることを理解して、土地探しをしてください。私のブログでも土地探しに関しては頻繁に記事にしているので、以下のサイトからタグ検索で「土地探し」を選んでもらえれば、土地探しの時に役立つ情報を見つけられると思います。また、YouTubeでも土地探しに関する動画をいくつか挙げていますので、そちらも参考にしてください。

https://pe-4.co.jp/category/blog/

4.まとめ

さて、販売されている宅地の中には、ろくでもないものが混ざっていること、地盤改良していても、ダメな家があること。ネガティブな情報ばかりで恐縮ですが、ご理解いただけたでしょうか?

ここまで記事を読まれた方でも、「そんなこと言われても、自分では分からない」と感じられるかもしれませんね。「これは困った」と思われたら、私にご相談ください。以下の問合せサイトに問合せを頂ければ、無料で応えられる範囲で回答させて頂きます。なお、私の時間は有限ですので、問い合わせを頂いても、即答できないかもしれませんが、どうか、ご容赦ください。

本格的に相談したい!と思われた方は、以下のサイトも参照ください。相談に必要な料金などを掲載しています。なお、お打ち合わせは、原則としてweb会議形式で対応させて頂いておりますので、その点ご了承ください。

神村真



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