• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

建築基準法の仕様規定に則って基礎形状を決める建築士にとっては、地盤調査結果の読み方や使い方は「謎」の多いものではないでしょうか?また、構造計算をする建築士にとっても、SWS試験結果から沈下量を予測することに抵抗があったり、地盤補強を行った場合に、基礎の安全性が担保されているのか?など、一抹の不安を感じておられる方は多いのではないでしょうか?

今回は、基礎設計と地盤の関係、地盤補償会社が出したSWS試験結果判定内容について第三者の意見を聴く場合の注意事項などを整理してみました。

  1. 基礎設計と地盤
  2. 検討できるのか?
  3. 第三者の意見を求める場合の注意事項
  4. まとめ

1.基礎設計と地盤

住宅に関わらずあらゆる構造物の基礎設計では、地盤についての以下の三項目が重要視されます。

  • 支持力が十分に発揮されるのか?
  • 作用する荷重に対する発生沈下量は許容値以内か?
  • 地震時にも支持力は期待できて沈下量は許容値以内に収まるのか?

なお、沈下についての項目ですが、沈下には、①荷重に対して即座に発生する即時沈下と②荷重に対して長期間に渡って増加する圧密沈下の二種類がありますが、①の即時沈下の大小は、地盤の支持力の大小と関連付けて考えることが出来ます。

また、三つ目の地震時の支持力と沈下量の問題は、主に、①地震時に作用する短期的な荷重についての支持力と②即時沈下に関する問題です。深刻な機能低下が起こるのは、液状化現象が発生した時だから、液状化の危険度を理解しておけばよいことになります。

これらのことから、三つの重要項目は、以下の様に書き直すことができます。

  • 支持力が十分に発揮されるのか?
  • 圧密沈下は発生しないか?
  • 液状化の心配はないのか?

2.検討できるのか?

さて、これらの三項目は、住宅の基礎設計では確認されているのでしょうか?

しっかりと検討されていれば、基礎設計検討書か地盤調査報告書にそのことが明記されているはずです。

住宅建設のために行われる地盤調査の報告書を見ると、支持力については、試験結果に基づいて数値が示されています。

しかし、圧密沈下量については、計算されているものもありますが、論理的に正しく計算されているものはあまり見かけません。また、液状化についても、合理的な説明をしているものは少なく、ハザードマップや地形から危険性の有無を示しているものが主流です

圧密沈下量の予測のためには、建物荷重作用時の地中内に発生している力と地盤が過去に受けたことがある力(圧密降伏応力と呼びます)の大小関係を知る必要がありますが、SWS試験結果では、圧密降伏応力を精度よく予測することは、なかなか難しいものです。

また、液状化の危険度を予測するためには、液状化する可能性の高い地盤の有無を知る必要がありますが、そのためには、①地下水位を知ること、②土質を知ることが求められますが、SWS試験では、両者を精度よく知ることは、かなり難しいのが実情です。

つまり、SWS試験では、支持力を除く二つの項目は、「かもしれない」・「危険性がある」程度の情報しか入手できないのです。

これらの残された二項目について数値評価をしようとすると、ボーリング調査と土質試験が必要になります。それらの調査のためには、数10万円の支出が発生します。

だから、安全側の判断として地盤の性能を低めに捉えて、何らかの地盤補強や地盤改良を行うというのが、住宅分野での一般的な対応方法です。

3.第三者の意見を求める場合の注意事項

上記の「安全側の対応」は、時間も費用も節約できるのですが、消費者は経済的負担と感じるようです。

この点に着目して10年ほど前から、調査会社や地盤補償会社が出したSWS試験に対する判定結果を、「第三者」が評価するサービスが現れました。このサービス。利用にあたっては注意が必要です。

例えば、「調査報告書では基礎接地圧を20kN/m2としているけど、実際の接地圧はもっと小さく〇kN/m2です。この接地圧なら、想定沈下量は〇mmで、許容沈下量をクリアします。だから我々の判定基準では、地盤改良は不要と考えられます」というようなコメントが返ってきたとします。

これは、沈下量の予測方法の確かさや、地震時にはどのような沈下が発生するのか等、疑問が残りますが、判定内容の根拠が数値化されていて、第三者の意見として適切だと思います。

また、「SWS試験結果から、自沈層(SWS試験結果のNswがゼロの地層)が確認されるけれど、この地域のこの深度にはローム層が確認されることが多いから、土試料を採取して、乱されていないロームであることを確認できれば、圧密沈下の心配はありません」というのも、よい「意見」ですね。

「どうやって乱されていないロームと判断するのか?」という課題はありますが、意見者の判断基準が明確に示されています。判断基準の確かさには疑問が残りますが、「意見」としては適切です。

一方、「判断の基準」を示すことなく、地盤改良は不要だと「考察する」とかいう意見を目にすることがあります。

例えば、こんな感じの文章です。

「(SWS試験結果の)Wswが1kN未満の地層の存在が認められますが、全体的には建物を支持できる良好な測定値が得られていて、著しい不同沈下の可能性は低い地盤と推察されます」

ここには、「著しい不同沈下の可能性が低いと推察する」根拠が一文も示されていませんね。

建築基準法では、基礎底面から下方に2mの区間にSWS試験結果のWswが1kN未満の地層がある場合は、住宅の重さによって発生する沈下が、建物に及ぼす影響を検討することが求められています。

この文章を書いた人は、どんな検討をしたんでしょう?「経験」ですかね?「勘」ですかね?こういう文章を書くなら、最後に、「知らんけど」とつけて頂きたいものです。

このような「判断の基準」が示されていないものは、営業トークと同じです。検討に値する価値もありません。意見が返ってくるまでの時間、意見を読むために使った時間が無駄です。。。

第三者の意見を採用するか否かは、あなた(建築士)が決めることですが、少なくても、上記のような「判断の基準」が明確に示されてないものは無視することをお勧めします

4.まとめ

昨年から、第三者の意見として、適切ではないと考えられる意見を目にすることが増えています。

こういう内容のない意見書を読んで、「地盤改良なしになった!」と喜んでいる建築士がいることにも憤りを感じています。

地盤は、住宅を支える唯一の材料です。この材料の良し悪しや判断の基準は、あなたがしっかりと握っておくべきことだと、私は思います。

神村真



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