• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

地震などの災害だけが、想定されるリスクではありません。隣地で掘削工事が行われたら?隣地で盛土工事が行われたら?そのような環境の変化が決して起こらないと言えるでしょうか?このような、「起こるかもしれないこと」に対して、あなたが設計する住宅はどこまで対応できるのでしょうか?このことを、私の専門である地盤に絞って考えてみました。

  1. 安全だから安心
  2. あなたの家の安全の程度は?
  3. 想定外にどう対処する?
  4. まとめ

1.安全だから安心

家に住む人にとって、住宅の「安全性」を深く考える機会はないと思います。ただ、あなたが設計してくれたことで、「安心」を感じておられるはずです。安全は工学的に検証できるものですが、安心は工学的に検証することは難しい項目だということです。

でも、あなたは、住宅の提供者としては、「安心」を届けることを心掛け、日々対応されているのではないでしょうか?だから、安全な住宅について、日々検討しておられると思います。

さて、そこでも問題になるのが、どのような安全に目を向けているかということです。

安全を脅かすものを「リスク」とすれば、どのようなリスクをリストアップされているでしょう

また、そのリスクを受容可能な状態にするために、どんな工夫をされているでしょうか?

2.あなたの家の安全の程度は?

当たり前の話ですが、想定された外力や環境の変化に対して安全性を検証することで「安心」が手に入ります

あなたは、住宅の供用期間中に発生するかもしれない災害や環境の変化に対して、どのような安全性の確保を行っておられるでしょうか?

例えば地震。

基準法レベルの耐震性は、震度5強までに対応しているそうですが、もろもろ安全に対する余裕があることで、より大きな地震にも耐えられるようです。私は、日本では、東日本大震災クラスの地震は、これまで何度も発生しているので、少なくても、東日本大震災クラスの地震に対して、住宅が安全であることは担保されるべきではないかと考えていますが、どうでしょう?

想定する水平力が増加すると、建物の重心位置や基礎形式によっては、滑動ではなく転倒について考える必要が生じると思いますが、転倒モーメントによる接地圧の増加に対して、地盤は十分な支持力を有しているでしょうか?

また、隣地に盛土される可能性はありませんか?

あなたが設計している住宅が直接基礎だったり、盛土自重による沈下の可能性を考慮して地盤補強を検討していない場合、隣地に盛土されると家は傾く可能性がありますね?

二つの例を挙げましたが、住宅が使用されている間に遭遇するかもしれない荷重や環境の変化を考慮して対処することで、「安心」の提供が可能になるのではないでしょうか?

3.想定外にどう対処する?

わたしは、最近、「想定外」をできるだけ少なくすることが、モノ作りの基本だと考えるようになりました。

以前は、限られた予算の中でモノを作っているのだから、「想定外は当然ある」と考えていました。

しかし、年齢を重ねるにつれて、災害で住宅を失うことの重みが次第に理解できるようになってくると、「想定外の地震だったので、家は壊れてもしょうがない」とは思えなくなりました。

個人の資金で作る住宅だからこそ、想定外があってはならないのではないでしょうか?

住宅の不同沈下等の設計の瑕疵については、瑕疵保険で補修費用を賄うことが可能ですが、擁壁の不具合や隣地工事での住宅の傾斜等は、瑕疵保険では対応できない部分もあると思います。そのようなリスクについては、建設段階でしっかりとバックアップしておく必要があります

例えば、水田を埋め立てた盛土造成地の場合、隣地に同じような盛土造成地が出来れば、盛土自重による沈下で、敷地全体が傾斜する可能性があります。このため、建物自重による沈下のみを想定外力としていては、建物が傾いてしまいます。

また、隣接する大きな敷地が売却されてマンションが建設されることになり、隣地で掘削工事が始まった場合はどうでしょうか?

掘削工事によって地盤が緩み住宅が傾斜する可能性や掘削工事に伴う地下水のくみ上げによる圧密沈下によって住宅が傾く可能性等、大きなリスクがあることが想像できます。

このように、住宅の地盤補強一つをとっても、単に住宅の自重だけを考えていては、住宅の供用期間中の環境変化に対して常に安心を提供できないことが分かります。

このため、住宅の引き渡し後に遭遇する可能性のあるリスクを抽出し、それぞれのリスクにどのように対処するかを考える必要があるのです。

全てのリスクに対処するために必要な費用は、当然、住宅の重さしか考えない場合の対策費用よりも大きな費用になるでしょう。だからこそ、それをどのように圧縮するかについて、細かく検討する必要が生じるのです。

杭状地盤補強を行う必要があるなら、本数を削減するためには、杭配置に対する基礎の安全性検討によって杭本数をぎりぎりまで減らす努力が必要になります。

盛土自重による圧密が懸念されるなら、圧密試験結果や一軸圧縮試験結果を基に、負の摩擦力の推定も必要でしょう。

そういう意味で、「SWS試験だけでは、安心を提供するための検討材料が全く足りない」のです。

4.まとめ

法律だけ守っていれば安心な住宅が提供できるなどということは幻想です

法律は、国が定める最低限の基準です。

どのような安心を届けるかは、あなた次第です。

構造に関する安心については、近ごろ構造計算することを是とする意見をよく耳にし、目にも留めますが、建物の直下の地盤とその周辺環境にある問題には、まだまだ目が向けられていません。

今一度、あなたが届ける安心についてお考え頂ければと思います。

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神村真



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