2020年には、水害の可能性が高い地域を公表することが義務化されました。
これで、新たに水害に遭う人が減ることは間違いありませんが、このような地域に家を建てられなくなったわけではありません。
2021年の最初に、改めて、「住む場所を選びこと」、「リスクを回避すること」について考えたいと思います。
多くの人は、地震や洪水時に被害にあうのは、古い住宅だとお考えのようですが、決してそんなことはありません。
新築住宅でも、大地震時には倒壊しています。
国は、2000年10月から、住宅の性能表示制度を導入し、住宅の性能を選択する権利を国民に与えていますが、その利用は、新築の一戸建て住宅(共同住宅を含む)の30%程度に過ぎません(2019年度)。
また、ご存じのように、住む場所によっては、洪水時に住宅が水没しています。
このように、消費者は、「住宅の性能」と「住む場所」を、適切に選択しなければ、被災する可能性があるのです。
このように、日本の法律は、消費者に「やさしくはない」のです。
【参考資料】
一般社団法人住宅性能評価・表示協会:統計情報
(https://www.hyoukakyoukai.or.jp/)
国土交通省:建設・住宅関連統計
(https://www.mlit.go.jp/statistics/details/jutaku_list.html)
日本は、6月に雨季があり、その後は10月頃まで台風に度々襲われます。
また、有数の地震地帯でもあります。
このため、住む場所を考える場合、水害と地震について配慮しておく必要があります。
さらに、地球温暖化がこのまま進行すれば、「今世紀末までの世界平均海面水位の上昇予測は0.26~0.82mである可能性が高い」と言われています。
0.8mも海水面が上昇すれば、ゼロメートル地帯と言われる、地表面標高が河川水面よりも低い地域は、堤防等の施設強化なしでは水没してしまう可能性があります。
このことから、このような地域では、将来的に、住宅の新築だけではなく、居住そのものが制限されるようになる可能性があります。
【参考資料】
全国地球温暖化防止活動推進センター:すぐ使える図表集,2-5 2100年までの海面水位の変化予測
(https://www.jccca.org/chart/chart02_05.html)
全国地球温暖化防止活動推進センター:IPCC第5次評価報告書特設ページ
(https://www.jccca.org/ipcc/ar5/wg1.html)
これらのことから、これから住む場所を考える場合、水害の影響を回避できる、標高の高い場所が望ましいことが分かります。
標高の高い場所は、標高の低い場所よりも比較的安定した地盤であることが多いので、地震にとっても有効だと考えられます。
安全な土地の探し方については、過去の記事を参考にして下さい。
なお、「土砂災害警戒区域」や「地すべり防止区域」等、居住が制限されている地域もあります。
土地探しや家探しをされるときは、このような制約の有無にご注意下さい。
標高の高い場所が災害に遭遇する可能性が低いことは自明ですが、そのような土地を探すことが難しい地域もあります。
この場合、盛土によって「かさ上げ」をする、寝室を2階以上の階に配置する、建物の1階部分を駐車スペースとする等の対策をとることで被害を回避または軽減できます。
ただし、これらの対策を行う場合は、十分な検討を行わなければ、不同沈下や耐震性能の低下を招くことを忘れてはいけません。
高さ1mの盛土は、木造二階建て住宅よりも大きな接地圧となるので、建物下に軟弱地盤が分布していれば、盛土自重による圧密沈下が発生します。
このような場合は、圧密沈下の終了を待つか、圧密沈下量を考慮して地盤補強を行う必要があります。
また、1階に壁がないピロティー構造とする場合、壁がないので耐震性能が低下するので、構造計算を行って必要な耐震性能を確保する必要があります。
住む場所を決める、住宅の性能を決める。
当たり前のことですが、多くの消費者は、あまり深く考えていないように思います。
私自身も、自宅建設をした15年ほど前は、あまり深く考えていませんでした。
それは、「建築基準法は、日本の気候や災害実績に対応した十分安全な性能を規定しているはずだ」、「有名な会社が、災害に遭うような土地を宅地として販売するわけがない」と、勝手に思い込んでいたからです。
しかし、それは間違いでした。
災害にあうリスクが高い土地は、売買されているし、そのような場所に必要な性能を持っていない家も多く建てられています。
近年、様々な情報がインターネットで集めることが可能になりました。
面倒くさがらずに、住む場所、家の性能は、自分で考えて選択するようにしましょう。
建築士は、消費者の期待に応えて、適切なアドバイスできるように勉強してください。
私のブログでは、このような人たちに必要な情報を、今年も提供してまいります。
神村真