• 地盤の専門家神村真による宅地防災の情報発信サイト

建築士や工務店の営業担当者から、「地盤はよく分からない」とか「地盤は難しい」ということを度々聞きます。

あなたは正しい。

「SWS試験結果だけから地盤を理解しろ」などというのは、専門家の無茶ぶりです。

大工さんに「蟻継ぎで。よろしく!」っと言われたら困りますよね。あれと同じです。

今回は、「地盤が分からないのは当然」というお話です。

  1. 「分からない」理由
  2. 最近の地盤改良の傾向とSWS試験
  3. 本当はどうすべきなのか
  4. まとめ

1.「分からない」理由

19歳から土ばかり触っている私にとっても謎多き地盤ですが、住宅分野では、地盤を理解する機会がほぼありません

なぜなら、スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)しかしないからです。

SWS試験は、土の種類も分からない、適用可能な地盤もはっきりしない、得られた結果の信頼性も定かではない、というように、謎の試験方法です。

私は、この試験結果から地盤リスクを評価するためには、以下のような特別なトレーニングを積まないと、ダメだろうと考えています。

  • 同じ場所で行ったボーリング調査結果を繰り返し見る
  • 様々な地形とSWS試験結果の関係を照合する

残念ながら、住宅建設では、SWS試験しか行わないので、こういう機会がほぼありません。

あなたが、「地盤のことが分からない」のは、日常的に「地盤の特性を評価しやすい道具で評価していないから」というだけなんです。

2.最近の地盤改良の傾向とSWS試験

一般建築物の設計では、基礎下に軟弱な地層が堆積していることが明らかな場合、建築物の不同沈下を恐れて、杭を利用した地盤改良を採用することが多いのですが、住宅分野では、予算の関係から、地盤に建物自重を作用させる場合が多いです。

住宅分野でも、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行された直後(2000年代初頭)は、「軟弱な地盤が出てきたら杭を打つ」ことが基本でした。ですから、SWS試験は、杭の先端地盤を見つける程度の目的で実施されていました。この基準では、かなりの高確率で地盤改良が必要になります。

地盤改良になる確率を下げたいというニーズに応えようとしたのが、地盤補償会社や地盤改良会社です。彼らは、顧客のニーズに応えるため、SWS試験結果を様々に解釈するとともに、様々な地盤補強方法を開発していきました。

結果として、比較的弱い地盤に建物荷重を作用させることが行われるようになり、地盤の評価は複雑化していきました。

SWS試験は、弱い地盤を強く評価してしまう場合がありますし、新しい盛土造成地では、SWS試験結果では分からない深刻な地盤が潜んでいる場合があるので、今の状態は、不同沈下の発生リスクが高い状態にあると言えるでしょう。

3.本当はどうすべきなのか

私は、住宅分野でも一般建築物と同様の地盤調査を行うべきだと考えています。

「住宅建設では一般建築物のような地盤調査は不要」という主張は、頻繁に発生している不同沈下事故からも、何の根拠もないことは明らかです。

現在は、建物が傾いても、地盤補償や瑕疵保険というセーフ―ティーネットによって、施主はほとんど費用負担することなく、家の傾きを修正することが出来ます。

しかし、適切な地盤調査を行っていれば、不同沈下事故は発生しません。社会の中で無駄なお金を使う必要はなくなります。

「今までSWS試験だけでやってきたのに、今さら、ボーリング調査や土質試験が必要なんて言えない」

そんな気持ちも分かりますが、あなたは、住宅の管理設計士。必要だと感じた時から、始めればよいのではないでしょうか?

ちなみに、あなたが、「ボーリング調査や土質試験は敷居が高くてちょっと・・・」とお考えなら、土質を確認することだけでも始められることをお勧めします。

4.まとめ

さて、あなたが、「地盤のことが分からない」のは当然のことだということをご理解頂けましたでしょうか?

この状態を続けていては、日本の住宅ストックやその市場の成熟はありません。あなた自身が、地盤のことを知り、その重要性を深く理解できるようにするためには、どんな地盤調査方法がよいのか、いま一度考えて頂けるとありがたいです。

業務の中で、どのように地盤調査の内容を変えていくべきか、どのような場合に一般建築物並みの地盤調査をするべきか。そんな疑問をお持ちでしたら、弊社までご相談ください。以下に問合せフォームのリンク先を張っておきます。



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